アソビューの地方創生事業
夜朝コンテンツ作りに注力 「キャッシュレス化」を推進
――事業紹介を。
「『ワクワクを全ての人に』をミッションとして掲げ事業を推進している。フィンテックという言葉がはやる中、われわれは遊び産業にインターネットの力『レジャーテック』を推進するべく、遊びの予約サイト『アソビュー!』を運営。サイトでは、遊び体験の予約のほか、レジャー情報や参加者の口コミを掲載している。事業者の登録料は無料で、掲載手数料は最高で15%。事業者にはカレンダーの設定やメッセージのやり取りができる体験事業者向けの体験商品予約管理システム“satsuki(さつき)”を無料で提供している。現在、アソビュー!の登録事業者は約7千、プラン数は約2万、ジャンルは450ある。従業員は約110人で、顧客視点を目指し、コールセンターも社内で行っている」
――地方創生事業は。
「私が管轄する観光戦略部は、自治体やDMO、観光協会などと協働して地域活性化の支援をしている。求められるものは『交流人口・滞在時間・宿泊者数・消費額の増加』だ。われわれの主な取り組みは(1)商品作り(2)磨き上げ(3)ウェブで予約できる販路整備(4)メルマガや特集ページを設けての情報発信―の四つ。最近は、宿泊者数、消費額を高めるためにも、夜や朝のコンテンツ作りに力を入れている。情報発信では、使われない場合もある紙のパンフレットから、メルマガなどウェブへの転換を推奨し、新規顧客の獲得につなげている」
――好事例は。
「鳥取県との鳥取砂丘でのプロモーションはうまくいっている。ラクダに乗る以外にサンドボード、パラグライダーなど10種類以上が体験可能だ。滞在時間は、これまでの馬の背を往復する40分から、3時間へと伸ばすことができる。情報発信以外にも、セミナーや予約の動線作りを4、5年かけて行った。現在は、流通総額が当初の約2倍まで伸び、47都道府県の流通総額ランキングでも10位台まで上昇した。官民が連携を図った好事例だろう」
――伸びている地域に特徴はあるか。
「地元を愛する人が多く、若い人を応援する文化がある地域は確実に伸びている。そのような地域では、われわれのことを一受託者でなく、パートナーとして迎え、共に切磋琢磨している」
――誘客を成功するためのカギは。
「当たり前のことを当たり前にやることが重要。ホームページを持ち、OTAで販売する、ウェブで体験者に口コミのコメントを書いてもらうなどだ。団体でバスを使い移動する人は減り、個人が自主的に情報を探して出掛ける時代となった。欲しいところに的確な情報を載せることや、利用者の利便性を考えて前日、当日での予約を可能にするなどの顧客視点の対応も大切。データの可視化などプロモーションの最適化もぜひ行ってほしい。地域全体に対しては、サステイナブルな社会を作るため、しっかりとお金を取る仕組みづくりを行ってもらいたい。無料のガイドツアーや安価な入場料を続けては維持が困難になる。また、中長期を見据えたブランディングをしてほしい。人が一定期間で代わり、同じ事業を繰り返すケースが多い。目的、役割、ゴールを初期に確立し、中長期で取り組むべきだ」
――人気コンテンツは。
「根強いのは陶芸教室。昨年は女性を中心にハーバリウム作りがはやった。今年はフィンランドなど北欧のサウナ文化が到来し、サウナ、温浴施設への人気が高まっている。観光地回りだとジップライン、異色なものとしては不要な器を投げて割るなど破壊コンテンツへの注目が高まっている」
――選ばれるには。
「SNSで画像や動画で発信できるコンテンツは、次の客を呼びやすい。地域ならではものや、エッジが効いた企画も有効だ。ペットの足跡を付ける陶芸教室が人気だが、オリジナリティも求められている」
――20年の計画は。
「昨年はGW10連休があるなど追い風があった。今年は一番の強い夏の時期に東京オリンピックがあり、余暇時間の使われ方で競合となる。閉店時間を伸ばす夜時間の使い方や、混雑箇所でのタイムマネジメントがカギとなるはずだ」
――今後の展望は。
「観光施設のキャッシュレス化を推進したい。寺社仏閣をはじめ、主要な観光地の多くでは、顧客のデータが取られていない。キャッシュレスを導入することで、需要と供給をコントロールするためのデータや、今後の企画のための情報が取得できる。また、海外への展開も加速する。アソビューは、昨年10月に米国・グーグルの予約サービス『Googleで予約』と連携を開始した。海外顧客への販売拡大につなげていく。将来は、無人でも楽しめる体験商品の開発も実現したい。まずは、誘客を拡大したのがアソビューだったという事例を一つでも多く作り上げていく」
※うちだ・ゆう=慶応義塾大学卒。博報堂コンサルティングやベンチャー企業を経て現職。省庁、自治体、DMO向けの観光事業を統括する。
【聞き手・長木利通】